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実用や本質と立場や正義がせめぎ合うブログ

コインは表と裏がくっついてコイン。 表の後ろを裏と呼び、裏の前を表と呼ぶ。 要するにコイン。

こんにちは今年 

DSC00356.jpg新年のご挨拶+時節にふさわしい逸品のご紹介。

A local Geta for attending Toshogu shrine.


新年明けましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願いします^ω^

正月くらいゆっくりしたいという人もいるかとは思いますが、何にせよ今年は既に始まってしまいましたので、目標がある方はぜひとも前々から準備を怠らず、見事達成できるように万全を尽くしていきましょう。
私は例年、大学が終了した翌日をトレーニングの開始日としてきました。 今年(日付の上では去年)も12月26日からトレーニングを開始したのですが、最初からガツンとやった結果、2日目にして歩行が困難になり、4日目の朝には階段の上り下りも不可能になってしまったためあえなく今は中断しています・・・。 何事も程度が大事です、いやホントに。 今はだいぶ具合がよくなってきたので、あと1週間もすれば回復し再開できると思います。


さて、そのトレーニングを開始した26日の日中、私は車で栃木県の日光へ行ってきました。 「日光下駄」という特殊な下駄の修理と新調が目的でした。 この日光下駄という下駄は東照宮に参詣するための物で、私は小学校の頃から愛用しているのですが、グーグル先生で検索しても詳しい説明があまり出てこないので今回は突っ込んで書いてみたいと思います。

まず日光下駄その物についての説明ですが、これは私が懇切丁寧にする必要はないと思います。
かいつまんで説明すると、日光下駄という履き物は日光という土地がなければ生まれなかった物で、東照宮との結びつきが非常に強い物です。 神社へ参詣するためには基本的に雪駄(草履系)を用いなければいけなかったわけですが、雪も降るし道も悪い日光でそれはちと酷であろうということで、下駄の上に雪駄を乗せてみた・・・というところですね。 すさまじいヘリクツのように感じますが、あながち間違ってないと思いますw

上に乗っている草履の部分は竹の皮を細長く剥ぎ、編み合わせて作ります。
下駄全体が市販の下駄と比べて非常に細く・・・ナローに見えると思いますが、これは草履の作り方と関係があります。 草履の部分を編むときに、5本の指を広げて間に差し込むようにして編み上げるため、人間の持つ指の本数以上の編み列を作れません。 つまり片手の指と指の間の数・・・4列以上は作れないということです。 列の数だけでなく、幅も同じく作り手の指がどれだけ広がるかに左右されてしまいます。 ですから列を減らしたり、指を閉じることでいくらか小さいサイズには対応できますが、足が幅広だからと言ってこれ以上草履(下駄)の幅を広げることはできません。 前後の長さは調整できます(編み続ければいいだけですから)。
実際、今回私といっしょに下駄を買いたいとついてきた大学の後輩2人のうち1人は、あまりに足の幅が広すぎて指が落ちてしまうためあえなく購入を断念しました^q^

日光下駄の場合台木よりも草履を編むのがものすごく面倒な作業で、1足分編むのに1~3日かかります。 日光下駄を買ったときに払うお金の大部分は、この草履にあると言っても過言ではありません。 また、日光下駄職人の仕事は草履を編み上げて台木に取り付けるだけです。 下駄職人だからと言って、台木から作っているわけではありません。 台木は全く別の木工所へ注文して作ってもらっています。

台木の部分は桐で出来ています。 今では「桐の下駄」はスタンダードになりましたが、昔はそのへんで手に入る安い下駄にはもっと硬い木材を使っていました。
桐が良いと言われる理由は柔らかいから。 つまりよく削れて減るということでもあります。 だからこそ足には優しいってことです。
日光下駄の場合、下駄がすり減ってしまったら上の草履を残して台木だけを交換していきます。 私が今使っている下駄は既に5回ほど台木を交換していますが、草履は最初からずっと同じ物です。
台木に付いている歯は下へ行くほど末広がりになっている台形で、他の下駄と違った安定感があります。 今では道が舗装されたため必要性が薄いのですが、これもまた土地柄を反映した機能です。 この点については後でまた説明します。

総合的に説明すると、草履と台木、それぞれの特殊性が相まってダントツの履き心地を持っています。 無駄に幅の広い市販の下駄なんて履きたくもありません。 足にしっくりくる幅、そしてグリップが利いていてソフトな草履表。 少なくとも今までこれ以上の下駄は履いたことはありません。
東照宮に参詣するための下駄であることを考えれば、もともとは足袋着用の上で使っていたはずですが、日光下駄の恩恵を最も感じられるのは素足で履いた時ではないでしょうか。 純粋に気持ちいいですし、履いていてとても自然に感じます。

さて、正直ここまでは調べれば出てくる程度のことです。 ここからは日光下駄その物だけでなく、現在日光下駄をとりまく環境についても少し書きたいと思います。

今「日光下駄を買いたい」と思ったならば、どこでどのように購入できるのでしょう。
一番知られているのは、山本政史(日光下駄山本:以後山本と表記)という方の工房に行くことです。 山本は日光下駄という製品で唯一「伝統工芸士」の資格を得ている職人さんの営む工房ですから、最も有名で、最も堅実な選択です。 本来の工房は自宅なんですが、ほとんどは日光の霧降にある「日光木彫りの里工芸センター」入って右手の実演コーナーで作業をしているので、実に気兼ねなく買いに行くことが出来ます。
山本以外では、倉田、木の花、そして名前は忘れてしまいましたがもう1つ今でも下駄を作り続けている工房があります。 山本と倉田は同期に先代(既に亡くなっています)の職人さんに習った兄弟弟子で、さらに山本が倉田以外の2つの工房に教えました。
山本と倉田が弟子入りした
先代は、当時唯一の日光下駄職人でした。 それが約15年ほど前の話で、先代への弟子入りは日光下駄が絶えることを危惧した行政からの呼びかけで行われたものです。 日光下駄が守られるか廃れるか、もう本当にギリギリの話だったんですね。

私も小学校で初めて日光下駄を履くようになってから、今の今まで山本の下駄しか履きませんでした。 何かこだわりがあるかのように聞こえますが、実際には他に選択肢など知らないし縁もなかっただけのことです。 しかし今回は父親が山本以外の日光下駄を試したいと言ったのがきっかけで、倉田にお邪魔してみました。
山本とうってかわり、倉田は伝統工芸師の資格を受けているわけでも、観光センターのようなところを借りているわけでもありません。 もう完全にただの民家です。 当然、最初はどこが倉田なのか全く分かりません。 看板だって出てないんですから分かるわけないです。 今考えるとどこで「ここが倉田だ!(´゚д゚`)」と判断できたのかすら分かりません・・・。 車が1台停まるスペースが庭にあるので、そこへバックで車を入れたのですが、つまりその時点で倉田だと分かっていたということ。 しかしいくら思い出してもただの民家(ry
倉田さん自身は背が高く、ものすごく気さくな方です。 私と後輩2人はコーヒーとあったかいお茶を何杯も頂いた上に最後はリンゴまで出してもらって、もはやありがたいというより申し訳なさ満点。 「うん、俺人付き合い嫌いなんで>ω<b」なんて、自らを孤高の人であるかのように言っていますが、実際は炸裂するほどフレンドリーです。

前述の通り、倉田も山本も同じ1人の師匠から作り方を習っています。 そして山本には2人の弟子がいる。 つまり今4軒ある工房のうち、系統として山本:倉田=3:1ということです。 山本で学んだなら当然その「色」が出るわけで、今手に入る日光下駄を大きく分ければ山本か倉田か、ということになるでしょう。
今回倉田で1足新しい下駄を買いましたが、これは父親が使う物で、その上足袋を履いて使うための物なので私が試し履きをできるものではありません。 素足で履くと表が汚れてしまうので、きちんと分けます。 私は山本に2つの下駄を修理に出しただけで、倉田では買いませんでした。
なので履いてみてどうかは分かりませんが、それ以外の差異点は以下の通りです。

  1. 重さ
    ・・・山本の方が重く、倉田の方が軽い。

    重いとか軽いとかに違いがあるのは、台木を製作している木工所が山本と倉田で違うから。 以前は同じ木工所に依頼をしていましたが、倉田が違う木工所に変えました。


  2. 指先の形
    ・・・山本の方が若干丸く、倉田の方がより角張っている。
    倉田の下駄は角張っています。 これは機能的な善し悪しではなく完全に好みの問題に尽きます。

  3. 歯の形
    ・・・山本の方が末広がりが強く、倉田の方が垂直に近い。

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    日光下駄本来の姿は山本(左)の方が近いようで、歯の広がり方が大きい。 倉田(右)は道路が良くなった現代ではさほど必要がないと判断し、比較的まっすぐ歯を落とす。 そのかわり歯は山本より若干長め(高め)に作られています。

  4. 草履
    ・・・山本の方が分厚く、倉田の方が均等に薄い。

    実際には薄く“見える”だけかもしれません。 山本の場合は同じ手法かもしれませんが、少なくとも倉田の物と比べると起伏があり、草履自体も厚みがあります。

  5. 鼻緒
    ・・・山本の方が平べったく、倉田の方が丸みを帯びてワラが詰まっている。
    鼻緒の具合は非常に重要なものです。 山本の鼻緒は最初から扁平な形をしていて、足にさっとなじみます。 なじみますが、下駄本来の鼻緒で引っかけるような履き方ができる・する人にとっては鼻緒に力が足りず不満な面もあるとのこと。 私はそのような履き方をしませんのでこれまで山本で不満を感じたことは一切ありませんし、むしろ履き心地よく思っています。
    倉田の鼻緒はむしろ正当な履き方に向くように作られており、中のワラの量が多く、堅めで丸っこい。 話を聞く限りでは、私の父親はこちらの方が好みのようです。

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左が山本、右が倉田の物。 実物は全体的に倉田の方が細く見えますが、実際はほとんど変わりありません。 また倉田の草履が黒くすすけて汚く見えるかもしれませんが、これは単純に竹皮にこういう模様が入っていただけのことで汚れているわけではありません。 天然素材の素地そのままですから、それが出るのは仕方のないことでむしろ楽しむくらいの気持ちでいた方がいいと思います。 父親も「なんだか汚いな・・・(´゚д゚`)」と言っていましたが、使っているうちに飴色っぽくなるものですから、むしろこういう模様が入っていた方が味が出る場合もあります。


日光下駄を初めて買う場合、だいたい12,000~18,000円程度が必要です。 例えば私の場合、靴のサイズが26.5~27.0cmの大きさで、山本では15,000円、倉田では13,000円で新しい下駄が買えます。 山本の場合は数センチ刻みでかなり細かいサイズの指定ができ、それに応じて1,000円単位で価格が上下します。 つまり足が大きい人は値段が高くなり、小さい人は安くなるということです。 倉田も基本的には変わりませんが、山本のようにはサイズは指定できず、大中小の3サイズから選ぶことになります。 私を含む一般的な男性のサイズなら、ほとんどが中に相当します。 その値段が13,000円です。
サイズ以外にも歯の形、色などの仕上げ、それから鼻緒の布にいい物を使ったりするとそれぞれ値段が上下します。 伝統工芸としての日光下駄を掲げる山本はさすがのバリエーションと対応を見せてくれます。 逆に倉田は相対的に実用を信条としているので、そういった特殊な歯のついた台木やきらびやかな鼻緒の物を作ってくれるのかどうかもちょっと分かりません(多分頼めば作ってくれないことはないと思います)。 鼻緒の布も、山本には色は豊富で、模様の入った物もたくさん置いてありますが、倉田には数種類しかありません。 ただし布を持ってくればいくらでもそれで作ってくれます。 かといってあまりにも柔い素材では簡単に破けてしまったりするので、自分で布を持っていくならその点はよく考えておかないといけません。 通常はベッチンを使いますが、やっぱりこの素材は破けません。
使っていって歯がなくなったら修理に出します。 ちゃんと使ってあげれば上の草履は残せますから、そのまま台木だけ交換ということになります。 これには山本では5,000円、倉田では7,000円かかります。 また、よく使っていると足の甲に当たる部分の鼻緒が破けることがありますが、これを直すのにはかなりお金がかかります。 説明は難しいので省きますが、山本ではこの鼻緒の布を交換するのに台木交換と同じだけのお金がかかります。 つまり5,000円です。

よくよく考えてほしいのですが、日光下駄を1足作るのにだいたい3日かかるそうです。 職人それぞれで差はありますが、これでもかというくらい気合いを入れてペースを上げても日産1足を超えることはありえません。 下駄に1万円以上払うのは、普通の感覚では相当リッチなことをしている気分になるでしょうが、もし倒れるくらいがんばって1日に1足・・・1ヶ月で30足作って売っても、それは45万円です。 それも売れればの話です。 手取りではありませんよ、その代金には台木や竹皮などの材料費も含まれているんです。 これでいったい生活がうまくいくでしょうか?
いつもいつもそれを考える必要はないと思います。 しかしこいつを履けるのはそういう苦労があってのことだと知っておくくらいはあってもいいでしょう。 山本にしても倉田にしても、何度も修理に持っていくとそのたびに職人さんは喜んでくれますしこっちも嬉しくなります。
皆さんもぜひ日光下駄を履いてみて下さい。 きっと気に入ると思います。
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2010/01/02 Sat. 23:00 | trackback: -- | comment: 0edit

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